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【「選ぶ」から「任せる」へ!】エージェンティックコマースはネットスーパーをどう変えるのか

【「選ぶ」から「任せる」へ!】エージェンティックコマースはネットスーパーをどう変えるのか

はじめに


以前のコラム では、エージェンティックコマースという新しい購買の方法についてご紹介しました。AIエージェントが消費者に代わって情報収集や比較検討、商品選定を行うこの仕組みは、単なる技術トレンドではなく、流通小売業のあり方そのものを変える可能性を秘めています。

今回のコラムでは、エージェンティックコマースがネットスーパーにどのような変化をもたらすのかを考えていきます。

エージェンティックコマースがもたらす購買体験の変化

エージェンティックコマースとは、AIエージェントが消費者の意図や状況を理解し、商品選定から購入までを支援・代行する購買モデルです。

現在のECでは、消費者自身が商品を検索し、比較し、購入を決定しています。一方でエージェンティックコマースでは、「今週は忙しいので簡単につくれる夕食を考えたい」「子どもが成長期なので栄養バランスを重視したい」「冷蔵庫にある食材を活用したい」といった目的を伝えるだけで、AIが最適な商品や献立を提案し、購入までをサポートします。

すでに海外では、AIを活用したショッピングアシスタントの実証や、会話による商品提案サービスが登場しています。また、世界的なEC事業者などがAIエージェントによる購買支援機能の開発を加速させています。こうした流れを見ると、ネットスーパーがエージェンティックコマースの影響を受けることは避けられないはずです。



AIが最適な商品や献立を提案し、購入までをサポート

AIエージェントでネットスーパーはどう変わるのか

現在のネットスーパーでは、利用者はアプリまたはWebサイトを開き、商品を検索し、価格やレビューを比較しながら購入しています。しかし、食品や日用品の購入をすることは、必ずしも楽しい買い物とは言えません。なにを買うか考える。足りないものを思い出す。価格を比較する。こうした行為には想像以上の時間と労力がかかっています。

エージェンティックコマースによって、このプロセスは大きく変わります。冷蔵庫の中身、過去の購買履歴、家族構成、アレルギー情報、さらには天候やイベント予定などを踏まえ、AIが最適な買い物リストを作成します。消費者はその内容を確認し、承認するだけです。つまり買い物は、「探す」ものから「任せる」ものへと変化していきます。

また、「20分でつくれる夕食にしたい」「子どもが喜ぶ魚料理をつくりたい」といった相談が買い物の入り口になり、AIがその意図を理解して必要な商品を組み合わせて提案します。こうした変化を整理すると、ネットスーパーは以下のように進化していくと思われます。


観点 今までのネットスーパー 将来のネットスーパー
利用の主目的 買い物を代替する 生活判断を委ねる
価値の中心 利便性・時短 思考負担の軽減・安心
生活者の役割 探す・比べる・決める 目的を伝え、承認する
購買の起点 商品・カテゴリ 献立・食シーン
UIの中心 検索・一覧 会話・提案
成果実感 安く買えた 失敗しなかった
小売との関係 必要な時だけ使う 継続的に頼る

商品が価格以外で選ばれる時代へ

エージェンティックコマースが普及すると、商品選定の基準も変わります。これまでのECでは、価格が重要な比較軸でした。しかし、AIエージェントが提案を行うことで、「最も安い商品」が選ばれるケースは減少するでしょう。

例えばカレーをつくる場合、「煮込み時間が短くてすむので、カレーとの相性が良い」「家族の好みに合っている」「過去に高評価だった」といった複数の要素を総合的に判断してAIはお肉などの商品を提案します。

焼き魚を食べたい場合にも、「今が旬か」「鮮度が良いか」「家庭の人数に適したサイズか」といった観点からもAIは商品を提案するようになります。



複数の要素を総合的に判断してAIがお肉などの商品を提案

かつては精肉店や鮮魚店、青果店の店主がお客様一人ひとりに行っていたような提案を、AIが担う時代になりつつあります。その結果、価格だけではなく、鮮度や品質、献立との相性、個人の好みといった要素が商品選定の判断基準として重要性を増していきます。

これは、小売業にとって売上拡大の大きなチャンスとなるでしょう。AIに「おすすめされる商品」になるためには、価格だけでなく、商品の魅力や特徴、レシピとの相性、産地や品質といった情報を充実させることが重要になります。こうした情報をもとに、AIがお客様一人ひとりの嗜好や購買履歴に合わせて最適な商品を提案できるようになれば、これまで見過ごされていた商品にも新たな販売機会が生まれます。

また、関連商品や献立に合わせた提案が増えることで、ついで買いやまとめ買いを促進し、購入点数や客単価の向上も期待できます。エージェンティックコマースは、消費者の利便性を高めるだけでなく、ネットスーパーにとっても売上拡大につながる大きな転機となるのです。

さらに配送の品質や柔軟性も、より重視されるようになるでしょう。AIが最適な商品を提案しても、希望時間に届かなかったり、生鮮食品の品質が期待を下回ったりすれば体験価値は大きく損なわれます。

そのため今後は、配送時間の正確性や当日配送への対応、柔軟な受け取り方法、鮮度保証、実店舗との連携なども大切な選定条件となります。AIが商品を選ぶ時代だからこそ、「どの商品を届けるか」だけでなく、「どのように届けるか」も評価されるようになるのです。

日本はエージェンティックコマースに適した市場?

こうした変化は海外だけの話ではありません。むしろ日本市場は、エージェンティックコマースとの親和性が高い環境を備えていると考えられます。

その背景にあるのが、高齢化の進行や単身世帯の増加、都市部への人口集中といった社会構造の変化です。特に流通小売業を取り巻く環境では、買い物弱者の増加、店舗・配送における労働力不足、食品品質への高い要求といった課題が年々顕在化しています。

AIエージェントが生活者の状況や嗜好を理解し、最適な商品選定や購買提案を行う仕組みは、こうした課題の解決にも大きく貢献する可能性があります。例えば、高齢者が商品を探す負担を軽減したり、人手不足が深刻化するなかでも効率的な受注・配送オペレーションを実現したりと、ネットスーパーの利便性と持続可能性を高めることが期待されます。

その反面、日本特有のきめ細やかな品質要求や対面サービス文化は、完全な自動化への移行を緩やかにする可能性もあります。だからこそ重要になるのは、「AIに任せる部分」と「人が担う部分」の最適な役割分担です。生活者が安心して利用できる購買体験を実現しながら、どこまで自動化を進めるのか。このバランスをどう取るかが、今後重要になってきます。

おわりに

エージェンティックコマースはAIによるレコメンド機能の高度化や会話型検索、献立提案などから始まり、ネットスーパーのあり方を変えていきます。そして、その先にあるのは「考えずに買える買い物体験」です。

その実現には、商品マスタや顧客データの整備、在庫情報のリアルタイム連携、AIが活用できるデータ基盤の構築など、多くの準備が必要になります。ヴィンクスでは、流通小売業向けのシステム構築・運用支援を通じて、エージェンティックコマース時代の実現に向けたデータ整備やシステム基盤構築を支援しています。

また、グローバルな決済プラットフォームを提供するStripeとの協業も進めており、次世代の購買体験を支えるサービス提供に向けた準備を進めています。ネットスーパーにおけるエージェンティックコマースの実現を見据え、いち早く取り組みを進めたいとお考えでしたら、ぜひヴィンクスまでご相談ください。




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高場 裕介 Yusuke Takaba

デジタルソリューション事業部
デジタルリテール2部
第2課
プロジェクトマネジャー

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