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【OCRで小売業のDXを加速させる!】紙の書類をデジタル化し、業務効率と顧客体験を向上させる

【OCRで小売業のDXを加速させる!】紙の書類をデジタル化し、業務効率と顧客体験を向上させる

はじめに

近年、流通小売業においてDXが急速に加速しています。AIなどの導入により、すでに単なる業務効率化のフェーズを超え、データを基盤とした意思決定や顧客体験の向上へと、変革が本格化しています。そのなかでぜひ注目していただきたいのが、紙に書かれた文字をデータ化するOCR(Optical Character Recognition)です。

 

■データ活用の流れ


名刺や領収書など、特定の帳票に特化したOCR機能を持つサービスは、多くの方が利用した経験をお持ちだと思います。一方、流通小売業の現場には、それ以外にも膨大かつ多様な紙の帳票類が存在します。これらをすべてデータ化しようとしても、以前のOCRでは精度面・運用面での課題が多く、導入しても現場のオペレーションとして定着しないケースが少なくありませんでした。

今回のコラムでは、技術の進化やサービス形態の多様化が進むOCRに、今こそ着目すべき理由と、流通小売業における具体的な活用法についてご紹介します。

今、OCRに着目すべき理由

かつてのOCRは、手書き文字の認識精度が低く、帳票のフォーマットに合わせた読み取り設定が難しいなどの課題から、業務への導入が難しいとされていました。しかし、近年はAI技術の進化によって、認識精度が98%前後にまで向上。筆跡の違いやフォント(書体)、レイアウトのばらつきにも柔軟に対応できるようにより、サービスによっては読み取る箇所を自動で判断する機能も備えています。


さらに、サービス形態も多様化しています。現在はクラウド環境での利用が主流となり、運用負荷やコストなど、自社のニーズに合わせて最適なサービスを選択できるようになりました。

かつてのOCRでは、読み取りたい帳票のフォーマットごとに、個別に読取設定を行う必要がありました。また、活字の認識精度は高かったものの、手書き文字については誤認識が起きやすく、人による確認作業も欠かせませんでした。そのため、導入しても運用に多くの時間と労力を要していたのが実情です。しかし現在では、そうした煩雑な作業を外部に委託できるアウトソーシング型OCRサービスが登場し、専門知識やリソースを持たなくても、高精度かつスピーディにデータ化が可能になりました。
 


OCRのフロー図

DXが進むなかでOCRの重要性は増しています。AIやデータ分析を活用して業務の高度化や顧客理解を深めるには、なによりもデータ量が必要です。しかし、流通小売業の現場には依然として紙でしか存在しない情報が多く残っています。それらをデジタルデータに変換すれば、AIが学習し、価値ある分析につなげることもできます。つまりOCRは、データ活用を推進する重要なテクノロジーと言えるのです。

紙を活かしたDXを可能にするOCR

流通小売業の現場には、「デジタル化が進んでいない」という単純な話ではすませられない、紙業務が残る事情があります。意図的に紙で運用し続けている理由や、どうしてもデジタル化が難しい業務が存在しているためです。発注・納品に関わる帳票類はその典型で、取引先との連携事情から、FAXや紙の書類によるやり取りが今も残っています。取引先のシステム環境や業務慣習に合わせる必要があり、全面的なデータ化が現実的でない場面が少なくないのです。また、全従業員(特にパート・アルバイトまで)にPCや専用端末を行き渡らせることはコスト面での負担が大きく、これもまた紙が使われ続ける要因になっています。

一方、顧客との接点に関しても同じような構造があります。紙のアンケートや申込書は今も店舗運営において重要な役割を担っています。例えば、店頭で実施される「お客様の声」のアンケートは、顧客のリアルな声を把握するうえで欠かせない手段です。しかし、これらをすべてデジタルに置き換えてしまうと、スマートフォンやPCの操作が苦手な高齢層が回答しづらくなり、接点を失ってしまう恐れがあります。こうした背景から、紙とデジタルを併用する運用が行われているのです。

さらに、法規制や社内手続きの関係で、完全なペーパーレス化が難しい業務も存在します。特に、署名や押印を必要とする申請書、自治体や関連機関に提出する文書などは紙での運用が続いています。

■データ化されていないケースと対応帳票例

  • 発注・納品に関わる
    紙の書類

  • アンケート
    申込・応募用紙

  • 署名や押印が必要な申請書
    自治体へ提出する資料

対応帳票例

注文書     見積書     請求書     納品書     領収書     申込書     レシート     アンケート     証明書     住民表     履歴書     etc…

こうした紙の資料をどうデジタル化するかが、DXをより一層深化させるうえでの大きな課題です。OCRは、その解決のための有効なアプローチとなります。紙を排除するのではなく、“紙を活かしながらデジタル化する“。そうしたDX推進がOCRによって実現できます。

OCRで取り込んだデータの活用法とは

紙の資料に書かれた文字情報をデータ化して活用することで、主に以下のようにDXを推進できます。

●顧客マーケティング・サービス品質の高度化
OCRで取り込んだ顧客アンケートや応募用紙のデータは、CRM(顧客関係管理システム)と連携することで、顧客理解とマーケティングの精度を高める資産に変わります。

 

■OCRとCRMの連携イメージ例


例えば、店舗や本部で集められる紙ベースの情報には、会員登録の申込書や「こういう商品が欲しい」という要望、お客様からのギフト注文、季節商材の予約などが含まれます。こうした内容を担当者が業務の合間に手入力していると、処理が後手に回り、会員情報との紐付けもスムーズに行えません。また、データ化されないままの情報はCRMに取り込めず、販促や顧客対応に活かすこともできないのが実情です。

一方、OCRを利用すれば、紙の情報を短時間でデータ化し、CRMへ取り込み、会員情報とすぐに紐づけることができます。これにより、お客様一人ひとりのライフスタイルや購買傾向を最新の状態に保ち、スピーディな販促活動や、お客様の購買履歴などに合わせたクーポン配信、店頭での接客の最適化など、より顧客に寄り添ったマーケティング施策を実現できます。

また、店舗スタッフのメモやフィードバックなどの “現場知”をデータ化することで、これまで一部のスタッフしか知らなかったノウハウを蓄積できます。そして、その知見をもとに、サービス品質の向上などにもつなげられます。

 

●データの資産化・ナレッジ化
OCRによってデジタル化された帳票や書類は、単なる画像データではなく、検索・分析可能な知的資産になります。

過去の書類をOCRで読み取り、キーワードで瞬時に検索できるようにすることで、業務の効率化やナレッジ共有を推進できます。さらに、こうしたデータをAI分析に活用すれば、店舗運営の改善傾向や顧客行動パターンの把握など、経営判断に直結する洞察を得ることも可能です。

 

おわりに

DXの核心にあるのは、データを活かして新しい価値を創出することです。紙の中に埋もれている情報をデジタル資産へと変換できるOCRは、流通小売業のデータ活用を一段と推し進める有力な手段といえます。OCRを導入すれば、店舗現場の知識や顧客の声を即座に反映でき、さらにAIやCRMと組み合わせることで、より高度なマーケティング施策や業務改善にもつなげることができます。ヴィンクスでは、OCRの導入支援からAIやCRMとの連携まで、ワンストップでサポートしています。DXを深化させるソリューションをお探しの方は、ぜひお気軽にご相談ください。




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山本 洋香 Hiroka Yamamoto

デジタルソリューション事業本部
デジタルリテール1部
DXソリューション課

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