VINXニューリテール・コラム
【小売業のDXシリーズ】ヘルプデスクを「店舗DXの起点」にする方法とは
はじめに
小売業の店舗では、POSをはじめとするさまざまなシステムや機器が利用されており、その運用を支えるヘルプデスクは店舗運営に欠かせない存在です。
しかし、ヘルプデスクが担える役割は、店舗から寄せられた問い合わせへの回答だけではありません。そこに蓄積される現場の声を分析して店舗運営の課題を発見し、業務改善やDXにつなげることもできます。
今回は、ヘルプデスクを起点に店舗DXを進めるための考え方や、AIを活用した今後の可能性についてご紹介します。
ヘルプデスクは「店舗の課題」が集まる場所
店舗で利用するシステムや機器にトラブルが発生したり、操作方法がわからなかったりした際、多くの企業ではヘルプデスクやコールセンターが問い合わせを受け付けています。
一般的なヘルプデスクでは、「問い合わせを受ける」「状況を確認する」「回答・解決する」という流れで店舗をサポートします。もちろん、店舗運営を安定させるためには重要な役割ですが、それだけでは問い合わせが発生した根本的な原因まで解消できるとは限りません。
業務の効率化や品質向上を実現するうえで重要になるのが、ヘルプデスクに蓄積された問い合わせ内容の分析です。店舗から寄せられる問い合わせには、単なる質問だけではなく、「この操作がわかりにくい」「この業務でミスが起こりやすい」「このシステムが使いにくい」といった店舗運営上の課題が表れています。
つまり、ヘルプデスクへのコールは、店舗オペレーションやシステム、サポートプロセスなどに存在する課題を把握するための貴重な情報源なのです。問い合わせ内容を分析し、「コール分析→課題抽出→改善実施」というサイクルを継続することで、ヘルプデスクを店舗改善の起点として活用できます。
実際に、問い合わせ分析から大きな改善につながった事例を2つご紹介します。
●店舗オペレーションの課題を改善
ヴィンクスのあるお客様は、棚卸を行う時期になると問い合わせが急増していました。そこで問い合わせ内容を分析したところ、特に新店からの問い合わせが多いことが判明しました。さらに内容を確認すると、棚卸業務の進め方に関する説明が十分ではないことが問い合わせ増加の一因になっていたのです。
そこで、棚卸前に新店向けの説明会を実施し、必要な手順資料を事前に配布。その結果、棚卸関連の問い合わせを50%削減できました。
●システムの課題を改善
特定のシステムや機械に関する問い合わせが多く発生するケースもあります。そうした課題を持ったあるお客様では、操作ミスによるエラーや操作方法の確認が多いことが分析によって明らかになりました。そこで、画面のレイアウトやボタン配置を見直したり、次に行う操作を画面上にメッセージとして表示したりする改善を実施。その結果、該当システムに関する問い合わせを30%削減できました。
さらに、こうしたコール分析と改善活動を継続した結果、ヘルプデスク導入初期には月間3,000件発生していた問い合わせを、5年間で70%削減できた事例もあります。
このように、ヘルプデスクを単なる「問い合わせ対応窓口」として利用するのではなく、そこに集まる情報を店舗改善に活用することが重要です。
ヘルプデスクの活用方法については、詳しい事例をまとめた資料もご用意しています。具体的な取り組みや改善のポイントをご覧になりたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてください。
「現場の声」を店舗改善につなげる4つのポイント
ヘルプデスクに蓄積された問い合わせを、どのように分析すれば店舗改善につなげることができるのでしょうか。ポイントは大きく4つあります。
①「現場の声」を正しく分類する
店舗からは日々さまざまな問い合わせが寄せられます。それらを一つひとつ個別に見るだけでは、店舗全体でどのような問題が起きているのか把握することは難しくなります。
そのため、業務プロセスなどを基準に問い合わせをカテゴリーごとに分類し、どの業務で、どのような問い合わせが多く発生しているのか整理することが重要です。
②「現場の声」の背景を読み解く
問い合わせ件数が多いものから順番に改善することは、もちろん有効な方法です。しかし、件数だけを見ていると重要な課題を見落としてしまう可能性があります。
問い合わせ件数そのものは少なくても、その背景に店舗オペレーション上の大きな問題や、潜在的なニーズが隠れている場合があります。そのため、「なぜこの問い合わせが発生したのか」「店舗では実際になにが起きているのか」という視点で分析することが必要です。
③改善策を検討する際に現場の意見を取り入れる
問い合わせデータを見るだけでは、その原因を正確に把握できないケースもあります。特に店舗オペレーションに関する問題は、実際に業務を行っているスタッフだからこそわかることも少なくありません。
そのため、データを分析する担当者だけで改善策を決めるのはおすすめできません。店舗の業務を理解している担当者や、場合によっては実際の店舗スタッフにも参加してもらい、現場でなにが起きているのかを確認しながら改善策を考えていくと、効果的な改善策を考えやすくなります。
④改善活動の効果を定期的に評価する
一度改善を実施して終わりではなく、「その後問い合わせ件数が減ったのか」「別の問題が発生していないか」を継続的に確認することも大切です。改善後も定点観測を続けることで、施策の効果を確認できるだけでなく、新たな課題の発見にもつながります。
AIでヘルプデスクはさらに進化する
近年では、AI技術の進化によって、ヘルプデスク業務そのものも大きく変わり始めています。例えば、以下のような3つの方法でのAIの活用が考えられます。
①AIチャットによる自動応答
ヘルプデスクに対するシンプルな問い合わせであれば、AIチャットによる自動回答が可能です。テキストや音声で入力された問い合わせ内容をAIが認識し、内容に応じた回答を表示したり音声で案内したりすることで、店舗スタッフ自身が問題を解決できる環境をつくれます。これにより、オペレーターが対応する問い合わせ件数を減らし、ヘルプデスク全体の効率化を実現できます。
②AI分析によるオペレーターサポート
オペレーターを支援する役割としても活用できます。問い合わせの通話内容を自動でテキスト化&要約し、その内容に関連するFAQや解決策をオペレーターへ提示します。オペレーターが膨大な情報をすべて記憶しておく必要がなくなり、必要な情報をリアルタイムで確認しながら回答できるようになります。応対時間を短縮できるだけでなく、対応履歴を記録する業務の効率化や精度向上も期待できます。
③AIロールプレイングを使ったヘルプデスク教育
AIはオペレーター教育にも活用できます。従来はスーパーバイザーとオペレーターが1対1で行っていたロールプレイングを、AIを問い合わせ役として実施。複数のオペレーターが同時にトレーニングすることも可能になります。経験の浅いオペレーターでも、実際の問い合わせに近い状況で繰り返し練習できるため、教育の効率化にもつながります。
そして、さらにその先には、「問い合わせが発生してから対応する」のではなく、「問い合わせが発生する前に問題を察知する」ヘルプデスクも考えられます。
■AIが問い合わせ前に自動検知
「システム上で取り消し操作が何度も行われている」「ある操作に通常より長い時間がかかっている」といった情報をAIが検知します。そこに過去の問い合わせデータなどを組み合わせて「なんらかの問題が起きているのではないか」とAIが判断し、問い合わせが発生する前に店舗へ確認や対応を促すことも、今後は可能になっていくと考えられます。
AIの活用によって、ヘルプデスクは「問い合わせに回答する場所」から、店舗運営の問題を予測し、先回りして改善する存在へと進化していく可能性があります。
おわりに
ヘルプデスクを店舗DXの「改善の起点」として活用し、スタッフが本来注力すべき接客や売場づくりにより多くの時間を使える環境をつくることが、これからの店舗運営ではますます重要になっていきます。動画でもヘルプデスクを起点としたDXについて解説していますので、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。
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