VINXニューリテール・コラム
【小売業のDXシリーズ】AIエージェントが変える小売の現場
はじめに
人手不足や業務負荷の増加に課題を感じている小売事業者の方も多いのではないでしょうか。こうした課題への対応策として、業務効率化や顧客体験の向上に向けたAI活用への関心が高まっています。
特に近年は、店舗運営や従業員支援を担うAIエージェントの活用が注目を集めています。
先日開催された「リテールテックJAPAN」では、当社ブースにおいて小売業で活用できるAIエージェントの事例を複数展示しました。会場では、小売業が直面する人手不足や生産性向上への対応に向けて、店舗運営の効率化や従業員の業務支援、顧客対応の高度化などを実現する具体的な活用方法をご紹介し、多くの来場者の皆さまから高い関心をお寄せいただきました。
元動画:「AIエージェントが変える小売の現場(小売業のDX41)」の動画を見る
事例① 人材の即戦力化と教育負荷軽減へのアプローチ
人手不足の深刻化やスキマバイトの活用拡大に伴い、新しく入るスタッフへの教育負荷や業務品質の平準化が、小売業における大きな課題となっています。
この取り組みは、そうした課題をAIエージェントで支援するものです。小売業の皆さまの中には、タイミーなどのスキマバイトサービスを活用されているケースも多いのではないでしょうか。
スキマバイトでは、短時間だけ勤務する新しいスタッフが日々店舗に来るため、業務に不慣れな方への説明や教育が必要となります。その結果、同じ内容を繰り返し説明しなければならないといった負担が現場に発生しています。
そこで、AIエージェントがスマートフォンを通じて作業手順や次に行うべき業務を案内し、経験の浅いスタッフでも迷うことなく業務を進められる環境を実現します。
作業手順や次に行うべき作業がスマートフォン上に表示されるため、店舗スタッフが常に付き添って指導しなくても、効率的に業務を進めることができます。
実際の業務プロセスでは、店舗スタッフや作業者がスマートフォンで売場の棚を撮影します。撮影した画像をAIが解析し、商品の欠品や品薄になっている箇所を自動的に検知します。その後、店舗システムの在庫データと連携し、補充が必要な商品とバックヤード内の保管場所を特定します。
AIエージェントは作業者に対して、以下を順番に案内します。
• 補充が必要な商品
• 商品の保管場所
• 実施すべき作業手順
作業が完了すると画面上で完了チェックが行われ、次の作業指示へと進みます。
■活用例① 初めて売場に立つスタッフがすぐに作業を始めたいとき
・スマートフォンにて商品棚を撮影
・AIが画像を解析、欠品・棚割乱れ・前出し不備などを自動検出
・優先度付作業リストとして提示
これにより、作業者は棚の写真を順番に撮影していくだけで、店舗スタッフから細かな指示を受けることなく、教育に依存せず一定水準の作業品質を維持しやすくなります。その結果、教育負荷の軽減と作業効率の向上、さらには店舗運営の生産性向上が期待できます。
事例② レジ業務における判断・対応支援の仕組み
多様な人材が活躍する店舗運営において、レジ業務に必要な判断や対応を適切に支援することが求められています。
具体的には、AIを活用してレジ業務を支援する「レジサポコンシェルジュ」というコンセプトが紹介されました。
レジ業務では、商品の会計だけでなく、
• 「お箸は必要ですか」
• 「レジ袋はご利用ですか」
• 「ポイントカードはお持ちですか」
といったお客様への声掛けが求められます。
しかし、スキマバイトや新人スタッフ、外国人スタッフの場合、必要な案内内容を覚えたり、適切なタイミングで実施したりすることが課題となります。そのため、現場では教育や指導に多くの時間と労力がかかっています。
この事例では、レジシステムにAIを組み込み、会計時に必要な案内項目を画面上へ自動表示します。さらに、スタッフが実際に「レジ袋はご利用ですか」「お箸は必要ですか」といった声掛けを行うと、発話内容をAIが認識し、対応済みとして自動的にチェックを付けます。
これにより、案内漏れや確認漏れを防止できるだけでなく、スタッフが適切な接客を行えているかについて、AIが対応内容を分析し、実施状況を記録として蓄積できます。
また、AIを活用することで多言語対応も容易になり、外国人スタッフでもスムーズにレジ業務を行えるようになります。これにより、スタッフごとの対応の差を抑えながら業務の標準化を進め、安定したサービス提供を実現できます。
■活用例② 経験の浅いスタッフがレジに立つ場面
・会話や操作からお客様への確認ポイントを画面表示
・操作に迷った際、必要なボタンや手順をナビゲーション
・外国語での会話も音声でサポート
事例③ POSトラブル対応における運用高度化
店舗システムの複雑化が進む中、POSや周辺機器のトラブル発生時における原因分析や対応プロセスの効率化が重要なテーマとなっています。
ヴィンクスのレジシステムでは、販売情報がリアルタイムでクラウドに送信されています。さらに、レジの操作履歴や稼働状況などの情報もクラウドへ集約することで、各店舗・各レジの状態を常時把握できる環境を実現できます。
従来、レジや周辺機器でトラブルが発生した場合は、店舗スタッフがコールセンターへ問い合わせを行い、その後システム担当者や開発担当者へエスカレーションされるケースが一般的でした。場合によっては、開発担当者がリモートでレジへ接続し、ログを確認しながら原因を調査する必要があり、多くの関係者による対応が求められていました。
しかし、レジのログ情報や操作履歴がクラウド上に蓄積されていれば、AIが情報を解析し、
• 現在発生している問題
• 障害の原因
• 必要な対応手順
を即座に提示することができるようになります。
ヘルプデスク担当者は、ChatGPTのような対話形式でAIに問い合わせるだけで、障害状況の確認から対処方法の案内までを迅速に行うことができます。これにより、開発担当者への依存を減らし、担当者に左右されない安定したサポート体制の実現につながります。
■活用例③ 店舗でPOSトラブルが発生
・AIがPOSの稼働状況を可視化しているため「どこで・何が起きているか」を即時把握
・操作ログ・電子ジャーナルをAIが自動解析
・現地確認や電話対応に頼らず、リモートで対応可能
事例④ 問い合わせ対応業務の効率化と高度化
問い合わせ対応業務では、自動化による効率化だけでなく、対応品質や判断精度の向上にも注目が集まっています。
店舗でシステムを利用していると、日々さまざまな問い合わせが発生し、その多くは本部のシステム担当者やヘルプデスクへ寄せられます。
こうした問い合わせに対して、AIチャットボットを活用することで、よくある質問や定型的な内容については自動で回答できるようになります。また、問い合わせ内容によっては人による対応が必要なケースもあるため、その場合はオペレーターへ自動的に引き継ぐ(エスカレーションする)ことも可能です。
さらに、問い合わせデータが蓄積されることでAIの回答精度は継続的に向上し、より多くの問い合わせを自動対応できるようになります。
加えて、音声による問い合わせの場合は、AIが話し方や声のトーンから緊急性や切迫度を判断し、問い合わせ内容に応じて優先順位を変更することも可能です。これにより、本部やヘルプデスクは重要度の高い案件へ迅速に対応できるようになります。
問い合わせ対応の分野は、AI活用が比較的進んでいる領域の一つであり、今後さらなる自動化と業務効率化が期待されています。
■活用例④
・既存POSの仕様書・機能一覧をAIに取り込み
・AIがFit&Gapを自動で整理・可視化
・検討すべき要件・確認ポイントを整理、要件定義書作成を支援
おわりに
現時点では実証実験や検証段階の取り組みも多く含まれていますが、今後はこれらの仕組みが実用化され、日常業務の中で当たり前に活用されるようになると考えられます。その結果、小売業全体において、生産性向上や人手不足への対応といった変化が期待されます。今後は、業務特性に応じた活用領域の見極めが重要になります。動画ではこのコラムでご紹介していないAI活用事例も取り上げていますので、参考にしていただけたら幸いです。
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