VINXニューリテール・コラム
【木を見ず森を見よ!】戦略的DX化のための隠れた主役“ETLツール”とは
昨今の社会変化に対応し、流通小売業ではさらにIT化が進んでおり、近年では多くの小売業のみなさまが複数のシステムを導入・運用することが通常の状態となっています。
こうしたなかで増えているのが、データ連携に関する課題です。
このコラムでは、データ連携の課題へのソリューションとして導入をおすすめしておりますETLツールや、その背景・必要性についてご紹介いたします。
かつては企業が導入しているシステムの数は少なく、それぞれが独立して機能していました。システム構成がシンプルであったため、データ連携を個々に開発・保守することが可能でした。
しかし、基幹システムやPOSシステム、顧客管理システム、ECシステムなど、現代ではかつてよりも多くのシステムが導入され、それらが連動することは不可欠です。システムの数が増え、そのデータ連携は乗数的に複雑化し、これまでのように個々にデータを連携させることが難しくなってきています。
各システムに蓄積したデータの連携と活用は、DX化において欠かすことができません。流通小売業においても例外ではなく、今後はETLツールの導入は必須の施策と言えるでしょう。
ETLとは、Extra(抽出)、Transform(変換・加工)、Load(送出)の頭文字を取った言葉。
ETLツールは各システムに点在するデータを用途に応じて抽出・加工してくれるため、システム間のデータ連携を簡単に行えます。
例えるなら、ETLツールは複雑な交差点で交通整理をしてくれる警察官のようなもの。さまざまなシステムから抽出されたデータがどこへどんな形で行けば良いかを教えてくれ、さらにシステム同士のつながりも可視化しやすくなります。
ETLツールは主に以下のような課題を解決できます。
【ETLツールで解決できるデータ連携の課題】
①特定エンジニアへの依存と迅速対応の実現
データは各システムに最適化された形で蓄積されているので、連携先システムに合う形式に加工する必要があります。また、データ連携のために機能改修を行う場合には、高度な知識を有するエンジニアを確保しなければなりません。
一方で、ETLツールを導入すればデータ連携が容易になり、データの分析や活用といったコア業務に人的リソースを投入できるようになります。
② システム改修費用・期間の圧縮
データ連携のためのシステム改修は、社内の人材だけでは対応できず、社外のエンジニアなどに依頼するケースも多くなります。業務内容の変化や高度化のたびに改修が発生し、その都度コストがかってしまいます。
ETLツールではノンプログラミングで連携の設定を行えるため、業務の変化や連携項目の変更にもコストをかけずに対応可能です。
③ ヒューマンエラーリスクの抑制
プログラム開発によるデータ統合では、データを直接操作するために人的なミスやエラーを避けることはできません。エンジニアが手作業で行う以上、どうしてもデータの誤変換や喪失のリスクがあります。
ETLツールでは直感的な操作だけでデータの変換・統合を行うことができ、ヒューマンエラーを防ぐことができます。
④ 情報漏洩リスクの回避・抑制
ExcelやCSVファイルなどの形式でデータを抽出し、連携を行っている企業も少なくありません。しかし、こうした形式に加工するとデータの持ち出しが容易になり、企業が遵守すべきセキュリティポリシーに反してしまう危険性が高いと言えます。
その点、ETLツールによる連携は持ち出せる形式でのデータ抽出を行わないため、情報漏洩の心配がなく安心です。
多くの課題を解決できるETLツールは、「将来に向けた投資」とも言えるため、早期の導入をおすすめしています。ETLツールがなくても個々のシステムは稼働するため後回しにされがちですが、長期的・戦略的な目線で見ると非常に費用対効果が高いと言えます。
例えば、ETLツールがなければシステムを入れ替えるたびにデータ連携のための改修が追加で必要になるのに対し、ETLツールがあればシステムを入れ替えても簡単な設定だけで連携が可能になります。
現在は、システムを取り巻く環境が目まぐるしく変わる時代です。そうした変化に柔軟に対応するために導入しておきたいソリューションがETLツールなのです。
ここでは、ETLツールを導入されたお客様の事例をご紹介します。
【お客様事例 ①】
老朽化していたシステムを刷新すると同時にETLツールを導入
何度もシステムの改修を繰り返すなかで、データ連携業務の複雑化・属人化が進んでいたお客様に対し、ETLツールの導入をご支援しました。
基幹システムと周辺システムのデータも多岐にわたっていたため、メンテナンス性や業務効率が悪化していました。
ETLツールを導入した結果、システム全体の可視化が可能になり、連携を行うインターフェイスも一元化されました。また、メンテナンス性や運用効率も大きく高まりました。
【お客様事例 ②】
システムに適合したETLツールに入れ替え
すでに導入されていたETLツールがシステムに適合していなかったお客様へ、ツールの入れ替えをご提案した事例です。
既存のETLツールでは、POSと現行システムとの連携開発時に新たな作業が追加となることがわかり、現行・周辺システムに適合したものに入れ替えることを決定。
周辺システムのバージョンアップや機能改修にも柔軟に対応できるようになり、拡張性及び保守性を向上させることができました。
最後に、ETLツールを導入する際に注意すべきポイントをご紹介します。
《ポイント①》
システムに適合するETLツールを選ぶ
現在は数多くのETLツールが存在します。数あるシステムから、自社の環境に最適なものを選択することが重要です。上の事例でもご紹介したとおり、システムに適合したツールでなければ十分な効果を得ることが難しくなります。
《ポイント②》
導入コスト・ランニングコストを確認する
ETLツールの導入や運用にはコストがかかります。ツールによってコストが大きく異なるため、事前にしっかり確認・選択しなければなりません。
今回の記事で、ETLツールの重要性をご理解いただけたでしょうか。DX化を進めていくには、新たなシステムを導入するだけではなく、変化に柔軟に対応できる環境づくり(戦略的な視点)が重要です。そして、その環境構築のためのソリューションがETLツールなのです。
ヴィンクスではこれまでにさまざまなお客様のETLツールの導入・運用をご支援してきました。これまで蓄積してきた知見を活かし、お客様にとって最適なツールの選定をお手伝いできるのがヴィンクスの強みです。ETLツールの導入にご興味がありましたら、お気軽にご相談ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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