【小売業のDXシリーズ】EC市場のトレンド ~注目されるライブコマース~ | 竹内 雅則 | VINXニューリテール・コラム | 株式会社ヴィンクス| 流通小売業向けシステム

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【小売業のDXシリーズ】EC市場のトレンド ~注目されるライブコマース~

【小売業のDXシリーズ】EC市場のトレンド ~注目されるライブコマース~

はじめに

今ではすっかり珍しいものではなくなったECサイトでの買い物。
コロナ禍を経て、実店舗へ行かずとも買い物ができることが当たり前となりました。
そんな中、新たな販売手法として注目を集めている
のが「ライブコマース」。まだ少し聞き慣れない言葉ですが、今後日本でも流行していくのか?海外ではどうなのか?ライブコマースをとりまく現状をご紹介します。

 

拡大が続く中国のEC市場で存在感を高めるライブコマース

上記は、現在のEC市場の市場規模とEC化率の推移です。
上のグラフの通り、2021年には世界全体で約5兆ドルもの規模になっています。

日本は約1,200億ドルにとどまっている一方でひときわ目立っているのが中国です。その規模は約2兆5,000億ドルと世界全体の半分を占めており、いかに中国のEC市場が巨大であるかがわかります。

また、市場全体におけるECの割合(EC化率)を見ると、世界全体で19.6%、中国ではなんと29.7%となっています。
日本は8.7%であり、世界的と比較するとあまりEC普及率は高くないことがわかります。

 


次にEC市場の成長率を確認してみましょう。世界全体で18.9%、中国は20.2%となっており、中国は伸び率においても世界を牽引していることがわかります。
市場規模の小さい日本でも成長率は12.6%です。

 


ここで、大きな存在感を見せている中国に注目してみましょう。
2021年の小売市場規模は45兆元、その中でもライブコマースは概ね2~3兆元ほどであり、あまり大きいとは言えませんが成長率は166.4%を記録しており、ライブコマースが急速な発展を遂げていることがわかります。

 

中国におけるライブコマースの現状

日本ではテレビで商品を紹介し、電話やインターネットで注文を受けるテレビショッピングが普及していますが、ライブコマースはこれがインターネット上でライブ配信されているもの、と考えるとイメージしやすいと思います。

中国には「ライバー」と呼ばれるユーチューバーのような、芸能事務所に所属し活動するライブ配信者が多数存在しており、ビジネスの一つになっています。
ライバーがリアルタイムで視聴者とコミュニケーションをとりながら商品を紹介したり、限定特典や割引などのイベントを組み合わせたりしてエンターテイメント性を出した売り方をするのが特徴です。

 


中国では小売業の仕組みやテレビの利用方法が発達しきる前にインターネットが発達しました。それ以前にテレビショッピングが普及していたアメリカや日本に比べて中国でライブコマースが飛躍的に発展している理由には、そのような技術的・環境的背景もあるのです。

このように新興国が新たな技術を獲得する際に、既存の技術をスキップしてさらに新しい技術を導入することを「リープフロッグ(蛙飛び)現象」と言います。

テレビショッピングと比較して低コストで配信でき、視聴者との双方向コミュニケーションも手軽にできることからライブコマースへの投資が一気に進み、寡占化状態となっています。

 


ライブコマースのプラットフォームは、現在上記の3社が市場を占有しています。
中国のライブコマース市場は立ち上がり段階ではありますが、既に莫大な市場規模になっていることもあり、この3社が中心となって拡大していくのではないでしょうか。

 

ライブコマースの利用状況


では、中国の消費者はライブコマースで何をどれくらい買っているのでしょうか?
中国の消費者一人あたりの購入額は年々大きく成長し続け、2022年には一人あたり年間14万8,000円となりました。

購入されている商品の内訳を見ると、衣料品や日用品、グルメ、化粧品などが多くなっています。
日本のテレビショッピングと大きくは変わらないようで、使用感を伝えやすい商品がライブコマースではよく購入されているようです。

 


ライブコマースの市場規模は、中国では40兆円に達している一方でアメリカは1.4兆円、日本は約286億円です。

日本のライブコマース市場はまだ黎明期とも言える段階ですが、現在、日本でもAbemaTVやFacebook、InstagramにLINEなど多くの企業がライブコマース事業者として参入してきています。これらはまだ乱立状態にあり、ネットオークションにおける「ヤフーオークション」やフリマアプリの「メルカリ」のようなリーダー的事業者は表れていません。

また、日本でも徐々に広がりつつあるライブコマースを支えるプラットフォーム事業の参入が進んでいます。
楽天が運営する「Rakuten Dragon」では映像の配信はもちろん、データ分析などのマーケティング分野をバックグラウンドでサポート。
Shopifyでも「Shopify Entertainment Program」としてYouTubeを活用したライブコマースに伴う顧客管理や受注・配送管理等をサポートするプログラムを提供しているようです。
このような流れを汲んで日本でもライブコマースは注目される状況になりつつあるのかもしれません。

 

おわりに

今回は拡大を続けるEC市場とその中でも特徴的なライブコマースをご紹介しました。中国に続いてこれから日本でも広がりを見せるのか、動向を注視していただければと思います。

ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。

 




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