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【持続可能な業務基盤を構築!】流通小売業の未来を支えるMD基幹システム戦略

【持続可能な業務基盤を構築!】流通小売業の未来を支えるMD基幹システム戦略

はじめに

流通小売業界は今、消費者ニーズの多様化や購買チャネルの複雑化に直面しており、MD(マーチャンダイジング)業務の在り方が大きく変化しています。

こうした変化に対応するために欠かせないのが、MD基幹システムの刷新です。今回のコラムでは、MD基幹システムの役割や課題、刷新を成功させるためのポイントを、ニューリテール対応の視点を交えて解説します。

MD基幹システムの役割と重要性

MD基幹システムは、商品企画、仕入れ、在庫管理、価格管理、棚割、販売計画といった商品戦略の根幹となる業務を支えています。これらは単なるオペレーションではなく、企業の収益モデルやブランド価値を左右する重要な業務であり、常に高い精度と迅速な対応が求められます。特に商品ライフサイクルが短期化し、消費者ニーズが多様化している現在において、MDの意思決定には複雑かつスピーディな対応が必要です。

さらにニューリテールの時代には、リアルタイムの需要予測やチャネル横断での在庫最適化、顧客データを活用したパーソナライズ戦略など、従来のMD業務の枠を超えた対応も行わなくてはなりません。これらの領域は、従来のMD基幹システムでは十分に対応しきれず、業務の分断や情報の非連携が生じてしまうケースも少なくありません。

こうした変化に対応するには、柔軟性と拡張性を備えたMD基幹システムへの刷新が不可欠です。単なるシステム入れ替えにとどまらず、企業のMD戦略を再定義し、デジタル時代に適応した業務プロセスを再構築することこそが、持続的な競争力の源泉となります。もはやMD基幹システムはバックオフィスを支える道具ではなく、経営戦略を具現化するプラットフォームとしての役割を担っているのです。


システムの変遷とパッケージ導入の潮流

MD基幹システムは、メインフレーム中心の集中管理型から、クライアントサーバー型、そして現在はクラウドベースのパッケージ型へと進化してきました。特に、近年注目を集めているSaaS※型のパッケージは、導入・運用負荷を大幅に軽減し、事業環境の変化に柔軟に対応できる点が評価されています。その結果、従来のように大規模なスクラッチ開発や重い保守負担に縛られることなく、スピード感のあるIT戦略を実行できるようになりました。

※Software as a Serviceの略。クラウドでソフトウェア(システム)を利用できる仕組みのこと。ユーザーは自身のデバイスにソフトウェア(システム)をインストールせずに、インターネット経由で利用できる。

流通小売業の多くの企業ではIT人材の確保が難しく、多くの中堅企業や地方拠点では既存システムの運用保守にリソースを取られてしまっています。こうした状況下では、新規システムをゼロから構築するよりも、業務に適したパッケージを選び、必要機能を段階的に導入するアプローチが現実的です。クラウド型パッケージのMD基幹システムであれば、インフラ運用やセキュリティ対策をベンダーに委ねることができるため、社内の負荷を抑えつつ安定稼働を実現できます。

さらに最新のパッケージ製品は、商品マスタ管理の柔軟性、在庫・価格情報の一元化、AIによる需要予測、外部システムとのシームレスな連携など、ニューリテール時代に必要な機能を標準で備えています。これにより業務の属人化を防げ、データドリブンな意思決定が可能になります。結果として、現場の効率化にとどまらず、経営レベルでのMD戦略の実行力向上も期待できます。

レガシーシステムの課題

長年運用されてきた従来のMD基幹システムには以下のような課題があります。

①業務変更への柔軟性不足
業務プロセスや市場環境が変化しても、それにシステムが対応できず、業務をシステムに合わせなくてはいけない状況が生まれてしまいます。オンライン販売などの新しい販売形態への対応も困難で、業務の停滞を招くこともあります。

②運用の属人化/ブラックボックス化
運用が特定の担当者に依存していると、システムの全体像を把握しづらくなります。また、仕様書が整備されなかったり改修履歴が不明確になったり、保守性や継承性の面でもリスクが生じてきます。

③データの分断/リアルタイム性の欠如
複数のシステム間でデータが分散していると、統合的な分析ができず“全社最適”を実現できません。

④ニューリテール施策への対応が困難
オムニチャンネル対応やパーソナライズドMD、AIによる需要予測など、現在の流通小売業に求められる施策への対応が難しくなります。


これらの課題は、現場の業務効率を低下させるだけでなく、企業全体の意思決定や市場への即応力をも阻害します。そのため、MD基幹システムの刷新は単なるシステム更新ではなく、経営基盤を強化する戦略的な一手となります。業務プロセスを標準化し、情報を一元化することで属人性を排除し、安定した運用体制を構築できます。

さらに最新パッケージの活用により、将来の事業拡大や外部システムとの連携にも柔軟に対応できる体制を整えられます。結果として、企業の成長戦略を支える強固な基盤が築かれるのです。

 


刷新のリスクと対策

刷新プロジェクトには以下のようなさまざまなリスクも伴いますが、事前に対策を講じておくことでトラブルなどを回避できます。

■MD基幹システムの刷新におけるリスク

開発コストの増大

基幹システムの更新プロジェクトでは計画通りに進まないことが多く、コストや期間が想定以上にかかることがあります。

  • 初期段階で達成可能な目標と現実的なスケジュールを設定
  • 本当に必要な機能を洗い出し、過剰なカスタマイズを避ける
  • 進捗管理をベンダーと共同で実施する
    (要件定義工程で、コスト・スケジュールは変動するものと考える)
業務の混乱

既存システムに慣れているため、使い方が分からず混乱したり、システム変更に対する抵抗感からうまく活用されない可能性があります。

  • 現場リーダーのプロジェクト参加
  • パッケージ(新システム)導入の目的を周知
  • ユーザ向け研修とその後のサポート体制の構築、運用マニュアル作成
  • 現場の意見も取り入れた移行計画を策定
データ移行の失敗

各種マスタや過去実績データの既存システムからの移行において、データ形式不一致や、移行中の欠損や不整合が発生することがあります。

  • 移行設計段階でデータ整備(不要・重複データの削除等)
  • 移行計画において、移行リハーサルを盛り込み、実施する
  • 手作業によるミスを防ぐため、データ移行を自動化(移行ツール)
  • 切替時一時のために、複雑なデータ移行・切替を避ける
外部システムとの
連携トラブル

他システム(POS・会計・受発注EDI等)とのデータ連携において、フォーマット不一致や内容不整合等が発生することがあります。

  • 連携仕様について、サンプルデータにて相互に確認する
  • イレギュラー時のふるまいについて、相互に理解する
  • 事前切替や段階的切替を検討する

刷新プロジェクトを成功に導くポイント

刷新を成功させるためには、以下のようなポイントをおさえることが重要です。

①経営層の明確なビジョン/現場の巻き込み
MD基幹システムの刷新は単なるITプロジェクトではなく、事業戦略のひとつと言えます。経営層が「なぜ刷新するのか」「どのようなシステムを目指すのか」を明確に示すことで、現場の理解と協力を得やすくなります。また、現場の業務課題や運用実態を踏まえた設計ができるように、初期段階から現場の声を取り入れるようにしましょう。

②業務プロセスの標準化/カスタマイズの必要性の見極め
属人化された業務や部門ごとの独自運用を見直し、業務プロセスを標準化することで、システムの標準機能に適した形で業務を進められるようになります。パッケージ導入にあたっては、業務をシステムに合わせるのか、業務に合わせてシステムをカスタマイズするのかを慎重に見極める必要があります。

③ニューリテール施策との連動
地域・店舗ごとのMDの最適化、在庫のリアルタイム管理、顧客データを活用したパーソナライズド広告など、ニューリテール施策はMD基幹システムと連動させることで効果的に推進できます。戦略とシステムが乖離していると、現場での活用が進まず、投資効果が限定的になります。

④柔軟性・拡張性を備えた設計
将来的な業務拡張や外部サービスとの連携を見据え、柔軟性のあるシステム設計を行いましょう。クラウド環境では、拡張性やセキュリティ対応も含めた設計が、長期的な安定運用の基盤となります。

⑤ベンダーとの信頼関係構築/運用体制の整備
導入フェーズだけでなく、運用・保守フェーズにおいてもパッケージを提供するベンダーとの連携は不可欠です。業務内容や導入の目的を共有し、改善提案を受けられるようなパートナーシップを築くことが、継続的な価値創出につながります。

おわりに

MD基幹システムの刷新は、単なるITシステムの更新ではなく、企業の業務改革と競争力強化を実現するための戦略的な投資です。商品戦略の根幹を支えるMD領域は、業務の精度・スピード・柔軟性が企業の成長に直結するため、刷新のインパクトは非常に大きく、経営判断における重要性も高まっています。

適切なベンダー選定とパッケージ活用、そして業務部門の参画と経営層の継続的な支援があれば、持続可能なMD業務基盤の構築は十分可能です。さらに、導入後も改善と活用を重ねることで、MD基幹システムは単なる業務支援ツールにとどまらず、企業の競争力を強化する戦略的プラットフォームへと進化していきます。

ヴィンクスでは、MD基幹システムパッケージ(MD ware)を提供しており、刷新の成功に向けた戦略や体制づくりもサポートしています。MD基幹システムの刷新をお考えの際には、ぜひご相談ください。




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谷 光一 Koichi Tani

MDソリューション事業本部
MDシステム2部

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