【小売業のDXシリーズ】世界のベンチャー企業動向 | 竹内 雅則 | VINXニューリテール・コラム | 株式会社ヴィンクス| 流通小売業向けシステム

VINXニューリテール・コラム - 竹内 雅則

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【小売業のDXシリーズ】世界のベンチャー企業動向

【小売業のDXシリーズ】世界のベンチャー企業動向

はじめに

リテールテック(小売事業におけるデジタル技術の活用)によって小売業のDX環境が整い、『ニューリテール化』が進みつつある現在。今回の記事では、リテールテックの注目分野やベンチャー企業、そして小売業がイノベーションを実現する上で必要なことについてご紹介いたします。

 

リテールテックで大きな投資が行われている分野

リテールテックとひと口に言っても、その技術はさまざまです。投資額が伸びているリテールテックにおいて、現在どのような分野が注目されているのかを、まずご覧ください。

 


出典:CN Insightsの公開情報を基にヴィンクスで作成

 

この図は、投資額の大きさを円の大きさで表したものです。投資が行われている代表的な分野としては、以下のようなものがあります。

 

■ eコマース
近年はインターネット販売の売上規模が拡大しているので、それに伴って投資額も増えています。

■ 店舗運営/分析
店舗にAIカメラを設置し、さまざまな分析を行うような技術が注目を集めています。

■ 物流の自動化
物流センターの業務を省人化し、効率的に物を動かしていくために欠かせない技術です。

■ レジなし決済
Amazon Goに代表される「レジなし決済」にも、引き続き大きな投資が行われています。

■ ラストワンマイル
お客様の自宅にお届けする最後の配送業務を効率化&省人化する技術のこと。ロボットやドローンを使った配送がニュースになっているのをご覧になった方も多いと思います。

■ その他
「オンライン不正決済防止」や「製品分析」「ダイナミックプライシング」などへの投資金額が増えています。

 

これらすべてに共通して言えるのは、やはり「AI」が1つのキーワード・技術キーになっているということで、上述の通り、リテールテックのさまざまな分野に積極的な投資が行われており、その投資額は年々増えています。積極的な投資の成果として、リテールテックは目覚ましい進化を遂げているのです。

 

リテールテックを牽引する世界のベンチャー企業

次に、リテールテックのベンチャー企業を輩出している国について見てみます。

 


出典:CN Insightsの公開情報をもとにヴィンクスで作成

 

■ アメリカ
調査会社のCB Insightsが取り上げている代表的なベンチャー企業100社のうち半数以上をアメリカの企業が占めています。シリコンバレーを中心としたアメリカのベンチャー企業が、リテールテックにおいても大きな存在感を示していることがよくわかります。

■ 中国
アメリカ以外の国の中で特に注目すべきなのが中国です。盒馬鮮生(フーマ―シェンシェン)をはじめとして、オンラインとオフラインを高次元で融合させたニューリテールの企業の成長が目立っています。また、そうした企業を支える存在としてのリテールテックベンチャー企業も数多く誕生しています。今後のリテールテックの発展において、中国の企業が大きな役割を果たすことは間違いないでしょう。

 

 

次に、リテールテックの代表的なベンチャー企業を具体的に見てみます。
CB Insightsはリテールテックの代表的なベンチャーとして、以下のような企業を取り上げています。

 


出典:CN Insightsの公開情報をもとにヴィンクスで作成

 

アメリカのFast社はEコマースのログインやチェックアウト(清算)を高速化するという技術に特化したベンチャーです。分析の分野では日本のABEJA社が取り上げられており、フルフィルメント分野ではアメリカのTakeoff社が掲載されています。

注目を集めたAmazon GoのようなGrab&Goの仕組み、お客様は商品を取ってお店を出るだけでお会計まで全て終わってしまうという無人店舗・レジレスの仕組みを提供しているのがStandard社で、アメリカを中心としたベンチャー企業が数多く取り上げられています。

 

さて、リテールテックベンチャー企業が数多く誕生し、新たな技術がどんどん生まれてくる中で、どうすれば小売業は先端のIT技術をうまく活用していけるのでしょうか。

 

「死の谷」を乗り越え、イノベーションの実現へ

 


出典:CN Insightsの公開情報を基にヴィンクスで作成

 

この図は、新しい技術が市場で実用化されるまでに、非常に大きな障壁(谷)があることを表したものです。環境や組織の整備、人材教育などのさまざまな障壁が立ちはだかる「死の谷(デスバレー)」を乗り越えてはじめてイノベーションは実現できるのです。

新しい技術は、「技術の種」そのものはたくさんあったとしても、それがどんどん成長して伸びるために、土・水・日光・適切な温度といった環境が持続しなければ果実をもたらす木にはなりません。

リテールテックも同じで、資金や人材、事業環境、実際に小売の中で使ってみて試行錯誤した結果から実用的で有益なものになっていくという成長プロセスが不可欠になります。

 

おわりに

新たな技術が成長するための環境を小売業の皆様が全て自前で用意することはハードルも非常に高いわけですが、既存のIT業者に丸ごと依存して進めるのも高いリスクが伴います。

いろいろな特徴と得意分野をもった企業を連携させて、小売業としてはその環境を提供するというのが「死の谷」を乗り越えるためには必要ではないでしょうか。

小売業にとって効率的で、かつ消費者にとって便利なお店をつくるという取り組みが、アメリカなど海外では積極的に行われているという状況になるかと思います。

新しい技術を使う場合、小売業側もこういった仕組みを理解して、「技術を如何にうまく使えるようにするか、発展途上のものをどう実用化していくか」ということを一緒に取り組んでいく姿勢が新たなイノベーションを実現させ、小売業を更に発展させる原動力の1つとなるのではないかと感じています。

投資も活発に行われており、また新たなリテールテックベンチャーが出てくると思います。
新たな動向や企業情報が入りましたら、またご紹介させていただきます。

本日はご高覧いただき、誠にありがとうございました。

 


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竹内 雅則 Masanori Takeuchi

取締役
常務執行役員

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