【小売業のDXシリーズ】ドラッグストア市場の近年の変化と今後の展望とは? | 竹内 雅則 | VINXニューリテール・コラム | 株式会社ヴィンクス| 流通小売業向けシステム

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【小売業のDXシリーズ】ドラッグストア市場の近年の変化と今後の展望とは?

【小売業のDXシリーズ】ドラッグストア市場の近年の変化と今後の展望とは?

はじめに

今回の記事では、市場規模が近年大きく成長し、M&Aなどによる再編が進んでいるドラッグストア市場の近況についてご紹介したいと思います。ドラッグストア市場が伸びている理由や企業別の特徴などを考察していきますので、ぜひご覧ください。

元動画:「ドラッグストア市場動向(小売業のDX 15)」の動画を見る

 

小売市場/EC市場の動向

まずは、流通小売市場やEC市場の全体の状況を見てみたいと思います。

 


この流通小売市場の推移を見ると、1990年代から長期にわたって横ばい状態が続いているのが見て取れます。2020年の市場規模は67.9兆円です。

 


次にEC市場の動向です。上のグラフは、2013年からのECの市場規模の推移を表しています。

青の「物販系分野」はECで販売されている一般的な商品、オレンジの「サービス分野」は旅行や飲食、チケット、緑の「デジタル分野」は電子書籍や音楽配信の売上を示しています。このグラフを見ると、コロナ禍以降は「サービス分野」の市場規模が縮小していることがわかります。

こうした情報を見ると、小売市場の規模は横ばいでありながら、ECでの物販の売上が大きく伸びていることがわかります。
 

ドラッグストア市場の急成長とその理由

それでは、EC市場が大きく伸びているなかで、ドラッグストア市場が近年どのように変化しているのかを見ていきたいと思います。
 


まずは、現在のEC市場でどのような商品の売上が伸びているのかを見ていきます。上のグラフは、売上全体のなかでECが占める割合を商品分類別に表したものです。

大きく割合を伸ばしているのが「生活家電・AV機器・PC/周辺機器等」や「書籍・映像・音楽ソフト」「生活雑貨・家具・インテリア」「衣類・服装雑貨等」です。ECで購入するほうが便利で、従来からECでの売上比率が高かった商品が、コロナ禍のなかでさらに販売額を伸ばしている状況です。

その反面、ドラッグストアで販売している「化粧品・医薬品」と「食品・飲料・酒類」は、ECの比率が大きくは伸びていません。ドラッグストアで販売している商品は、現在も多くの消費者がリアル店舗で購入していることを表しています。

 


これは業態別の成長性と収益性を表したものです。円の大きさは、市場規模を示しています。ドラッグストアで販売される商品がリアル店舗で購入されていることもあり、近年はドラッグストアの成長性と収益性が共に高くなっていることがわかります。

 


次に、ドラッグストア市場の売上の成長について詳しく見てみたいと思います。上のグラフを見ると、ドラッグストアのCAGR(年平均成長率)は5.75%にも及んでいます。

商品別の売上を見ると、食品の売上が急成長しています。近年のドラッグストアは、スーパーで販売されているような食品を置く店舗が増えていることもあり、食品のCAGRは9.2%となっています。

また、調剤医薬品のCAGRも9.0%を記録しています。現在のドラッグストアは処方箋調剤も可能な店舗が多くなっているため、調剤医薬品の売上も伸びているのです。ドラッグストアのメイン商品は、処方箋がなくても購入できるOTC医薬品です。実は、このOTC医薬品においては、CAGRの成長率はわずか2.4%です。

このことからわかるのは、ドラッグストアの収益が拡大しているのは、従来から販売していたOTC医薬品が伸びているわけではないということです。

スーパーマーケットと同様の食品を扱ったり、調剤薬品を手掛けるようになったりしたことが、成長の大きな要因となっているのです。
 


このグラフは、ドラッグストアの企業数と店舗数の推移を表しています。
統廃合が進んで企業数が年々減少しているなかで店舗数は増えており、2021年には2万店舗を超えています。

 


一方で、店舗の面積の変化を見ると、大型のドラッグストアの割合が急速に増えました。2021年には150坪以上の店舗が65%を占めるまでになっています。店舗数が増加するとともに、大型化も進んでいるのです。

 

企業別の特徴と再編の状況

 


こちらはドラッグストアの企業別の売上高と店舗数を表したものです。売上高を見るとウエルシアホールディングスさんがトップであり、店舗数が最も多いのはマツキヨココカラ&カンパニーさんです。

 


次に、各企業の商品別の売上構成比を示したグラフを見ていただきたいと思います。

マツキヨココカラ&カンパニーさんをはじめ、上部に掲載されている企業ほど医薬品や化粧品の売上比率が高く、都市型の比較的小型な店舗を多く展開しています。これらの企業は、都市で働く女性をメインターゲットとした企業と言えます。

反対に、下に掲載されている企業ほど、食品の売上比率が高く、大型の店舗を展開しています。これらの企業は、郊外の主婦をターゲットとしていると考えられます。

 


こちらは小売業の各市場において、上位の何社で市場の8割の売上を占めているのかを示したものです。コンビニエンスストアはわずか3社ですが、食品スーパーは107社の売上を合計しなければ市場の8割に達しないという状況です。

そうしたなかで、ドラッグストアは上位27社で全体の8割の売上を占めています。

現在では、ドラッグストアをはじめとした小売業ではM&Aが盛んに行われていますので、今後はドラッグストア市場の寡占状況も変化していくと思われます。

 

おわりに

今回は、ドラッグストア市場の動向についてご紹介しました。

ヴィンクスでは、ドラッグストアなどの小売業のDX化をサポートしています。DX化についてご興味がありましたら、ぜひご連絡をいただければと思います。

 


元動画:「ドラッグストア市場動向(小売業のDX 15)」の動画を見る

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竹内 雅則 Masanori Takeuchi

取締役
常務執行役員

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