【小売業のDXシリーズ】無人店舗の技術と今後の課題 | 竹内 雅則 | VINXニューリテール・コラム | 株式会社ヴィンクス| 流通小売業向けシステム

VINXニューリテール・コラム - 竹内 雅則

VINXニューリテール・コラム

【小売業のDXシリーズ】無人店舗の技術と今後の課題

【小売業のDXシリーズ】無人店舗の技術と今後の課題

はじめに

今回のテーマは、Amazon Goに代表される無人店舗です。無人店舗を実現しているグラブ&ゴーの技術について、普及に向けての技術的な課題や今後の展望も含めてご紹介します。

 

本コラムの動画「無人店舗の裏事情(小売業のDX 05)」を見る



無人店舗を可能にする技術

 


無人店舗を実現しているグラブ&ゴーという技術は、購入する商品の代金をレジなしで自動決済できる仕組みを構築するものです。このグラブ&ゴーの技術の特徴について最初にご紹介したいと思います。

技術① 入店時の認証
まずはお客様が店舗に入ってきた際に認証する技術が必要です。事前登録済みのスマートフォンなどで認証する技術や、顔認証などで個人を特定する技術などが用いられています。

技術② お客様と商品の紐付け
続いて、お客様が店内で「どのように動いたか」を動線追跡の技術を使って検知します。この動線追跡の技術は、セキュリティの分野で大きな発展を遂げています。

また、お客様が棚の前に立って商品を手に取った場合には、それを検知する必要があります。カメラと重量センサーを組み合わせることで、商品を手にした際の検知の精度を高めています。

技術③ 退店時の自動決済
商品を手に持ったお客様が店舗の外に出たのを検知し、事前に登録されているクレジットカードなどで決済を行います。この退店時の処理までを含めた一連の流れで、グラブ&ゴーの技術は成り立っています。

 

 

無人店舗の技術的な課題とは?

無人店舗を支えるグラブ&ゴーの技術には、まだ多くの課題が残されています。ここでは、グラブ&ゴーの技術的な課題とされているいくつかの例をご紹介します。

 

課題① 親子での買い物
 


例えば親子がスーパーマーケットで買い物していると、お子さんが商品を棚から取って親が持っているカゴの中に入れることがあります。

しかし、このような行動を無人店舗で行った場合、2人が親子であることが認識されていないと、誰に決済させるかという判断が難しくなります。こうした複数のお客様の関係性を認識する部分で、まだ技術的な課題があります。

 

課題② 友人同士での買い物
 


次に、友人同士で買い物するケースです。友人とのお買い物では、棚から手に取った商品を交換してお会計することがあります。このように棚から手に取った人と会計する人が異なる場合に、どのように紐付けするかという課題が残されています。

 

課題③ 大人数の来店時
 


店内のお客様の人数が少ないときには、動線追跡や商品の紐付けの難易度は低くなります。しかし、一度に多くのお客様が来店すると、グラブ&ゴーの技術を運用するためには非常に高性能なシステムが求められます。

大人数の来店時にはAI解析の多重処理も必要になるため、現状では技術的なハードルがあります。


課題④ 大量のセンサー&複雑なシステム
 


最後の課題は、上記の3つとは異なる視点からのものです。
上の写真の通り、無人店舗の店内はスッキリしているものの、その裏側には非常に多くの重量センサーや距離センサーが設置されています。たくさんのセンサーが複雑に設置されているため、ケーブルも膨大な数になります。

そして、センサーが故障した場合には、故障したセンサーを選別して交換するのに大きな手間がかかります。こうした運用面の煩雑さとコストも、グラブ&ゴーの技術を活用する上での大きなハードルになっています。

 

 

無人店舗の今後の展望

最後に、今後の無人店舗の展開について私の考えをご紹介したいと思います。

展望① コストと精度のバランスが重要に
グラブ&ゴーはたくさんのセンサーを組み合わせて運用する技術のため、その分のコストが発生します。高い精度を追求するとコストが高くなるため、実現する精度とコストのバランスを合理的に見極めることが、今後は必要になってきます。

展望② 無人店舗に適した業態の開発
無人店舗では当然、レジ業務を担う店員が不要になります。お客様が人と接しないでお買い物を終えることになるため、「店員のいない店舗で買い物をしたいとお客様が思うか」「店員がいない店舗はお客様にとって便利なのか」という点も考慮しなくてはなりません。

現在でも、駅のキオスクやオフィス内の売店、人手不足が深刻な過疎地の店舗などでは、無人での運営が適していると言えます。今後も無人店舗に適した新たな業態の開発を進めていく必要があります。

 

おわりに

現在、世界中のベンチャー企業やメーカーが、無人店舗の技術に関する研究開発を進めています。技術は日々向上しているので、進化を注意深く見守り、ぜひ便利な店づくりに役立てていただきたいと思います。

 

ご拝読ありがとうございました。

 




「無人店舗の裏事情(小売業のDX 05)」動画を見る


ヴィンクスYoutubeチャネル「小売業のDX」シリーズ動画を見る

 

この記事へのお問合せ

竹内 雅則 Masanori Takeuchi

取締役
常務執行役員

詳しくはこちら