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【小売業のDXシリーズ】物流危機とフィジカルインターネット

【小売業のDXシリーズ】物流危機とフィジカルインターネット

はじめに

今回の記事では、昨今の社会課題となっている物流危機と、それを解決するための手段として注目されている『フィジカルインターネット』についてご紹介します。
日本の小売業が変革を遂げていくためには、物流の課題解決が不可欠です。
ぜひ、今回の記事をご高覧いただき、物流危機について知見を深めていただけたら幸いです。

 

本コラムの動画「物流危機とフィジカルインターネット(小売業のDX 11)」を見る



最大10.2兆円の経済損失をもたらす物流危機

 


上のグラフは、物流コストがインフレを起こしている構造を表したものです。赤い線が物流の供給量、青い線が物流の需要を表しています。2000年頃は供給量が需要を大幅に上回っており、物流コストはデフレ状態となっていました。

しかし、2010年頃以降は供給と需要が逆転。需要が右肩上がりなのに対し、ドライバー不足などの理由から供給量の減少が顕著になっています。需要が増え、供給が減る流れは今後も続くことが予測されており、物流危機と呼ばれるまでに至っているのです。

2030年には最大で10.2兆円の経済損失が発生すると言われています

 

 

物流コスト上昇の要因①「需要側の状況」

 

物流コストがインフレを起こしている理由について、需要側の状況について詳しく見ていきたいと思います。

 


この図はECの市場規模を表したものです。年々市場規模が拡大していることがわかります。

 


一方、こちらの図は営業用トラックの積載効率の推移を示したものです。
統計方法の変更があったために途中でグラフが切れている箇所がありますが、約30年の間に積載効率が悪化している状況がわかります。

これは、お客様が小口配送を求めるようになってきていることが大きな要因のひとつと言えます。
例えばスーパーなどへの納入も、可能な限り短期間でタイムリーに、小さく小分けされたものをひとつにまとめて送るようになっています。そうなると、パレットの間に種類ごとにわけられた商品がスカスカの状態で積まれるような状況になり、積載効率が悪くなってしまうのです。

 


このグラフは物流コスト(道路貨物輸送・宅配便のサービス価格)の推移を表したものです。
道路貨物輸送のサービス価格は、2010年代後半にはバブル期を上回っています。また、宅配便のサービス価格に至っては、近年大幅に上昇していることが見て取れます。物流サービスの需要側にとって、コストは大きく高まっているのです。

 

 

物流コスト上昇の要因②「供給側の状況」

 

続いて、供給側の状況を見ていきたいと思います。

 


こちらの道路貨物運送業の運転従事者数の推移を見ると、近年は減少傾向にあり、そして今後も大幅に減っていくことが予想されています

 


一方で、この図はトラックドライバーの平均年齢を示したものです。
トラックドライバーが全体的に高齢化しており、特に物流を担う営業用・大型トラックのドライバーにおいて高齢化が目立っています。

このような運転従事者の減少や高齢化によって、物流業界のドライバーの確保が難しくなっています。
また、人手不足の影響などによって、トラックドライバーの所得は上昇傾向にあります。

 


すでにご紹介した通り、小口配送が増えたことによる配送効率の悪化も供給側にとって深刻な課題となっています。こうしたさまざまな要因が重なって、供給側のコストが大きく増加しているのです。

 

 

次世代の物流システムとして提唱されるフィジカルインターネット

 

それでは、物流危機にどのように対応していくべきなのか。今回は経済産業省が提唱している対応策をご紹介します。

 


物流コストの高まりに対して、運賃を圧縮していくのは難しいと言えます。
ドライバー不足が深刻化し、人件費も高まってきている中で、運賃を削減するのは現実的ではありません。
むしろ、ドライバーの賃上げや労働環境の改善を行って、人材確保を進めていく必要があります。

物流コストを下げるために着目すべきは、物流業務に残る非効率性です。
生産性を上げることによって、物流コストの圧縮やドライバーの労働環境の改善が可能になります。

生産性向上の方法として現在注目されているのが、インターネットの通信網のように配送網を構築する『フィジカルインターネット』という考え方です。

 


フィジカルインターネットとは、上の図のように、大規模拠点(ハブ)に荷物を集約し、そこから各拠点(スポーク)に分散輸送を行う配送方式のことで、複数の企業での共同配送や巡回輸送をベースにすることで、物流の効率化が可能になります。

 

 

おわりに

フィジカルインターネットの実現などさまざまな改善を進めていくことで物流危機を脱することができます。
このままでは大きな経済損失が発生する可能性もある中で、業界全体で対策に取り組んでいくことが求められているのです。

 

今回の記事は以上です。
この度はご高覧いただき、誠にありがとうございました。

 




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竹内 雅則 Masanori Takeuchi

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