【小売業のDXシリーズ】日本の小売業の生産性はなぜ低いのか | 竹内 雅則 | VINXニューリテール・コラム | 株式会社ヴィンクス| 流通小売業向けシステム

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【小売業のDXシリーズ】日本の小売業の生産性はなぜ低いのか

【小売業のDXシリーズ】日本の小売業の生産性はなぜ低いのか

はじめに

今回は小売業の生産性についてご紹介させていただきます。日本の小売業の生産性はどのような状況なのか、そして生産性における日本の小売業の課題などについて考察していきます。

本コラムの動画「日本の小売業の生産性について(小売業のDX 10)」を見る



日本の小売業の労働生産性

まずは2つのグラフを見ていただきたいと思います。

■ 海外との労働生産性の比較
 


上のグラフは、日本の労働生産性を100とした場合の諸外国の労働生産性を示したものです。アメリカは日本の1.6倍も労働生産性が高く、1位のアイルランドにいたっては2.46倍も高くなっています。

 

■ 労働生産性の推移
 


このグラフは、1970年から2020年までの労働生産性の伸びを示したものです。このグラフを見ていただければわかりますが、海外は大きく生産性が高まっているのに対して、日本の伸びは非常に緩やかです。

次に、日本の産業別の労働生産性についてのグラフです。小売業はちょうど中位ぐらいにありますが、1時間あたりの労働生産性は4,219円。日本の平均である4,764円を下回っています。

こうした調査結果からは、海外と比べて労働生産性の低い日本の中で、小売業はその平均よりも低いということがわかります。

 

日本の小売業の生産性が低い理由

 


次に、日本の小売業と海外の小売業の比較をご覧ください。

■ 日米における小売上位企業の生産性比較
 


このグラフで一人あたりの売上高を見ると、大手の小売業で比べた場合には1時間あたりの売上高に大きな差がないことがわかります。大手企業に限って言えば、日本とアメリカの生産性は同等なのです。

では、なぜ日本とアメリカの小売業には生産性に違いが出ているのでしょうか。

 

■ 小売業の規模別の付加価値
 


こちらのグラフは、日本の小売業の企業を資本金別に分け、それぞれの従業員数や売上高が全体に占める割合を示したものです。

資本金1,000万円未満の企業を見てみると、従業員は全体の20%を占めているのに対し、売上は14%にしか達していません。一方で10億円以上の企業は、従業員数の占める割合が17.2%なのに対して、売上は21.3%にも上っています。

大手企業は「大量仕入れ大量販売」が可能です。また、ITに投資する予算も十分にあります。そうした要因から、一人当たりの売上高が高くなっていると思われます。

その反面、中小企業は投資を行う予算も十分ではありません。小規模な体制で運営しているため、効率化できていない面も多いのではないかと思います。その結果、資本金1,000万円未満の企業では、一人当たりの1時間当たりの付加価値が3,781円となり、生産性の向上に非常に苦慮している状況です。

■ 小売業態別の寡占状況
 


このグラフは、各業態の売上全体の80%を何社で占めているかを表したものです。コンビニエンスストアは、10.8兆円ある全体の売上の80%以上をわずか3社で占めていることがわかります。

一方で、食品スーパーマーケットは、上位107社の売上を合算しないと全体の80%に達しません。M&Aが近年活発に行われているドラッグストアも、この調査の時点では27社となっています。こうした食品スーパーマーケットやドラッグストアの状況を見ても、日本の小売業はまだ中小企業が多いことがわかります。

海外と比べて中小企業の占める割合が大きいことが、小売業の生産性の上昇を妨げる大きな要因のひとつになっていると言えます。スーパーマーケットやドラッグストアでは、大手による中小企業のM&Aが増えていますが、今後もそうした流れは加速していくはずです。そして、生産性が低く競争力の弱い企業は淘汰される時代になっていくと思われます。

 

小売業におけるIT人材の課題

生産性の向上にはITへの投資が必須の時代になっていますが、小売業のIT人材についても大きな課題が浮き彫りになっています。

■ IT人材の配置
 


まずひとつ目が、DXを進めるにあたってIT人材がユーザー企業側にいるのか、IT企業側にいるのかという点です。上のグラフの通り、日本以外の主要国ではユーザー企業側にIT人材が在籍しています。一方で日本は7割以上においてIT企業側に人材がいる状況です。

DXを推進するにあたっては、小売業の業務を十分に理解したIT人材が必要です。そのため、ユーザー企業側にIT人材がいる海外と比べて、日本はDXを進めにくい状況にあるのかと思います。

 

■ IT技術者がいる場所
 


最後に、IT技術者がどこにいるのかを示したグラフをご覧ください。上のグラフを見ると、IT業界の人材は他の産業に比べて著しく東京に集中していることがわかります。実に50%を超える技術者が東京に集中しています。

地方の小売業の企業にとってIT人材の不足は深刻です。小売業界の生産性を高めるためには、こうした状況の改善も重要なポイントになってくるのではないでしょうか。

 

おわりに

今回は、小売業の生産性についてご紹介しました。生産性を高めるDXを推進するには、小売業を熟知したITのスペシャリストが欠かせません。DXによる生産性の向上に取り組みたいとお考えでしたら、ぜひ私たちヴィンクスにご相談いただければ幸いです。

 

この度はご高覧いただきまして、誠にありがとうございました。


 




「日本の小売業の生産性について(小売業のDX 10)」動画を見る



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竹内 雅則 Masanori Takeuchi

取締役
常務執行役員

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