セイノーホールディングス株式会社様(AUTO/400) | 導入事例 | 株式会社ヴィンクス| 流通小売業向けシステム

導入事例

セイノーホールディングス株式会社様(AUTO/400)



セイノーホールディングス株式会社

メインフレームからSystem iへ移行
AUTO/400を採用し、運用方法をそのまま継承

会社概要

社名 セイノーホールディングス株式会社
創業/創立 1930年/1946年
資本金 424億8100万円
売上高 4337億6600万円(連結)
従業員数 約2万6000名(セイノーグループ、2009年3月)
本社 岐阜県大垣市
会社URL http://www.seino.co.jp/seino/shd/

メインフレーム上の運用をそのままSystem iに継承する

情報サービス 技術部 運用管理課 課長 藤田規雅氏  情報サービス 技術部 技術1課 参事 河合浩志氏  情報サービス 技術部 運用管理課 係長 増田吉公氏

西濃運輸が2007年1月に実施したIBM メインフレームからSystem i への基幹マイグレーションについては、本誌前号(i Magazine No.4)でもその一部をレポートしている。その内容は、従来「NetView」(日本IBMのネットワーク監視ツール)で行ってきた運用監視をサードベンダーのシステムに切り換え、さらに音声通知とNotesベースの障害対応支援システムを作り込んで運用監視の効率と質を大幅に向上させたというものだったが、今回は自動運用の移行がテーマである。

西濃運輸が2007年1月に実施したIBM メインフレームからSystem i への基幹マイグレーションについては、本誌前号(i Magazine No.4)でもその一部をレポートしている。その内容は、従来「NetView」(日本IBMのネットワーク監視ツール)で行ってきた運用監視をサードベンダーのシステムに切り換え、さらに音声通知とNotesベースの障害対応支援システムを作り込んで運用監視の効率と質を大幅に向上させたというものだったが、今回は自動運用の移行がテーマである。

「本来ならば、移行先の仕組みに合わせて旧システムを改築するのが本道でしょうが、今回のマイグレーションでは移行コストを最小限に抑え、短期移行となることを考慮して、プログラムはストレートコンバージョンとし、運用体制も変更せずにメインフレームで実施していたものをそのまま引き継ぐことにしました。その結果、運用システムの引き継ぎではかなりの調整と工数を要することになりました」とセイノー情報サービス 技術部運用管理課課長の藤田規雅氏は振り返る。

しかし、同社のこの取り組みを別の角度から捉えれば、「System i をメインフレーム並みに使用するための先駆的な取り組み」とも言うことができる。最近、各社のメインフレームからSystem i への移行が増えてきている。その際、メインフレーム上で作り込んだシステムや運用方法をSystem i 上において継承したいというニーズは少なくない。とはいえ、System iはメインフレームとは基本設計が根本的に異なるので、System iをメインフレーム並みに働かせるための拡張や作り込みが必要になる。それが、今回のマイグレーションでセイノー情報サービスが示したもう1つの意義なのである。

従来の運用コスト6億円を半減させる目標

ここで、西濃運輸の基幹マイグレーションの概要を見ておこう。発端は「システム運用コストの削減」という。セイノー情報サービス 技術部技術1課参事の河合浩志氏は、次のように説明する。

「西濃運輸では1980 年代からIBMメインフレームを軸に全国の荷物の集荷・配送状況を管理する基幹システムを運用してきました。しかし、昨今の各種プラットフォームの運用にかかるコストを比較すると、メインフレームは飛び抜けて高価です。そこで情報投資の最適配分の観点から脱メインフレームを決断し、代わりとなるプラットフォームの選定を進めました。その結果、メインフレームのCOBOL資産を有効活用できることと、分散システムとして1989年からAS/400を利用してきた経験(2002年センター統合済み)などを勘案してSystem i への移行を決めました」

従来の運用コストは年間約6億円。これを約3億円へ半減させる目標を立て、2005年1月に移行計画の作成に着手した(図表1)。そして同年6月からソフトウェア資産の棚卸しに入り、システムの分析・設計、コンバージョン・ツールの開発、プログラムのコンバージョンとその検証などを行って、約1年半後の2007年1月にサービスインした。

移行したプログラムは約3万本。COBOL 約1万本、CA-Easytrieve Plus(日本CA の第4世代言語)約4300本、JCL 約1万6000本という内訳で、総ステップ数は1500万。この移行に約1800人月の工数がかかっている。

図表1 基幹システムの運用コスト削減

3つの移行課題をAUTO/400の機能拡張で解決

System i 用の自動運用ツールには、ヴィンキュラムジャパンの「AUTO/400」を採用した。「System i の自動運用ツールといえばAUTO/400 以外に思い当たる製品がなく、すんなりと採用が決まった」(河合氏)という。

ただし、従来メインフレーム上の「A-AUTO」(ビーエスピー製)で構築していた自動運用システムの移行では、かなりの調整と個別の機能拡張を行っている。ヴィンキュラムジャパンの藤川尚志 運用プロダクト部部長は、「西濃運輸のジョブスケジュールは、そのボリュームや業務分類からあたかも複数の会社の業務プログラムが走っているような規模観でした」と感想を述べる。

移行に際して課題としたのは、次の3点であった。

(1)世代管理の拡張
(2)日付生成パラメータの開発
(3)スケジュールマスタの新しい定義方法の確立

(1)の世代管理では4桁の世代数まで必要とされた。藤川氏は「これまで、データを5年以上保存するユーザーでも世代数は3桁もあれば十分でした。西濃運輸のように4桁を必要とされるお客様は初めての経験でした」と振り返る。従来のメインフレーム上での運用では、「A-AUTO が3桁しか持たなかったのでマスタを2つ用意し、運用でカバーしていました」とセイノー情報サービス 技術部運用管理課の増田吉公 係長は説明する。

移行にあたっては、1万5000巻の磁気テープのデータ(計約8TB)をすべてSystem i のディスクへ移し、ディスク上で世代管理することとした。また、ヴィンキュラムジャパンでは、AUTO/400 で世代管理を行うオプション機能である「I-O・MASTER」を拡張し、4桁を扱えるように改良した。最新のAUTO/400 ver.5 は、この拡張されたI-O・MASTERをオプションとして備えているという。

なお、磁気テープデータのディスクへの移行に先立ち、近隣の「ソフトピアジャパン」(岐阜県大垣市)内のデータセンターにSystem i 570を設置し、セイノー情報サービス内のSystem i 570との間でHA ツールを利用してリアルタイムバックアップ・システムを構築している(2005年10月)。この両マシンが、2007年1月のホスト切り替え以降、本番機とバックアップ機になる。このリアルタイムバックアップの導入も、今回の基幹マイグレーションの重要な取り組みの1つである。

日付生成パラメータを新規開発 スケジュールマスタも新たに定義

(2)の日付生成パラメータとは、バッチプログラムへさまざまな日付情報を受け渡すためのもの。一般的なジョブでは、ある特定の日付を起点としてプログラムを稼働させるのが通例だが、西濃運輸の場合、特有のカレンダーを基に営業日計算した日付をプログラムへ受け渡す方法を取っていた。そこで、拡張機能として日付を計算して自動で受け渡す手法で対応した。

(3)のスケジュールマスタの定義は、今回の移行でも大きな取り組みであったようだ。というのも、A-AUTOは「ジョブネット」と「スケジュール情報」の組み合わせ(1×n)でジョブのスケジュールを定義するのに対して、AUTO/400の方は5つの階層を持つ「カテゴリ」で定義する(1×1)違いがあるからだ(図表2、今回のマイグレーションでは4階層を使用)。スケジュールマスタの移行を担当した増田氏は「従来のスケジュールマスタを分解して展開し直したり自動コンバージョンにかけたり、さまざまなことを試行して、整然とした定義体系とすることを目指しました」と説明する。移行の対象としたスケジュールマスタは、約1万6000本あり、約1万5000カテゴリに移行された。現在、1日平均5500ジョブ(グループ単位では4000カテゴリ)が走る。

「AUTO/400への移行に関連したトラブルはまったく起きていない」と藤田氏は語る。

図表2 ジョブスケジュールマスタの定義方法の違い
図表3 基幹マイグレーションでの採用ツール/機能

本記事は、i Magazine 5号に掲載されたものです
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