大分県自治体共同アウトソーシングセンター様 (Hybrid SYNC)
大分県自治体共同アウトソーシングセンター
IBM iベースで推進する
大分県版の自治体クラウド
本番機とバックアップ機の二重化体制で災害対策レベルを向上
POINT
- ・大分県内8市町村がIBM iベースの自治体クラウドへ移行
- ・パッケージを共有し各自治体のカスタマイズを極小化
- ・「Hybrid SYNC」でサーバー二重化体制を構築
会社概要
社名 | 株式会社大分県自治体共同アウトソーシングセンター http://www.olgo.co.jp/ |
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本社 | 大分県大分市 |
設立 | 2004年 |
資本金 | 3000万円 |
従業員数 | 81名(2012年10月) |
IBM iベースの自治体クラウドを大分県が始動

自治体クラウドが進展を見せている。クラウド技術を活用し、地方公共団体の情報システムの集約と共同利用を進めることで、ITコストの削減や住民サービスの向上、そして災害対策の強化を図る。東日本大震災の経験を踏まえ、堅牢なデータセンターの活用により行政情報を保全し、災害・事故発生時の業務継続を確保する点からも、自治体クラウドは急速に注目度を高めている。
その自治体クラウドへの取り組みが最も進んでいる都道府県の1つが、大分県である。
同県は全国でもトップレベルの高速・大容量の光ファイバーネットワークである「豊の国ハイパーネットワーク」をいち早く整備したことでも知られている。
いわゆる「平成の大合併」のもと、同県でも市町村合併が進み、58あった市町村は2006年までに18に統合された。これ以降、自治体システムの共通化が検討されていたが、最初の具体的なステップとなったのは2009~10年度、大分県と宮崎県の10市町が参加した総務省の「自治体クラウド開発実証事業」である。
この事業ではクラウド利用を前提に、事務作業の標準化とパッケージ製品を使った共通システムの構築が具体的に検証された。そしてその結果をベースに、大分県版自治体クラウドサービスの構築プロジェクトがスタートしたのである。
自治体クラウドでは、パッケージを共有して各自治体の独自機能を極小化することが重要なポイントとなる。大分県内の市町村ではそれまでの運用実績から、住民情報関連業務や税業務など住民サービスに直結する基幹パッケージ製品として2つが選定され、クラウド化を推進した。その1つが、IBM i上で稼働する総合住民情報システム「Tops21-e」(オーイーシー)である。
同プロジェクトでは以前からTops21-eを利用してきた8市町村を対象にクラウド化を推進した。豊の国ハイパーネットワーク経由で、データセンターに設置されたIBM( i 8202-E4C)と上でTops21-eを共同利用する。
その一方、自庁舎内にもバックアップサーバーとしてIBM iを設置し、全業務データは各市町村側でリアルタイムに保全することとした。万一データセンターが利用不能になった場合は、窓口の証明発行業務のみをバックアップサーバーで継続するという仕組みだ。
このクラウドサービスを提供するのは、大分県自治体共同アウトソーシングセンター(OLGO)である。同社は2004年、大分県内の自治体に向けた運用管理サービスやアウトソーシングサービスの提供を目的に誕生した大分県内のソフトウェアベンダーである。
Tops21-e を核にHybrid SYNCでデータ同期
同プロジェクトは住民基本台帳法が改正される2012年7月を目標に進められた。「 それまで8市町村はそれぞれの独自要件に沿ってTops21-eにさまざまなカスタマイズを加えていましたが、クラウド化に際しては、ある代表市町村の現行機能をベースに大分県共通機能として一本化。業務運用を改め、パッケージに合わせて見直すことになりました」と、プロジェクトを担当したOLGOの大霜有司氏(事業統括本部)は語る。
これに際して不要外字の削除や類似文字の同定を実施し、納付書などの帳票も様式を統一することにした。8市町村から本番サーバーへは、最大で約1300クライアントがアクセスしている。
さらにデータセンター側の本番サーバーと、各市町村に設置した8台のバックアップサーバーの間は、HAソリューション「Hybrid SYNC」(ヴィンクス)で、リアルタイムに同期している。
当初、本番・バックアップ機間のデータ同期は、ftp転送による夜間処理で実施し、前日までのデータを同期させる予定であった。「 しかしデータ容量が大きく、ftp転送が予想以上に時間を要すると判明したのです。そこで並行して検討を進めていたHAソリューションの導入を、プロジェクト途中である2011年秋から本格的に検討し始めました。そして性能やコスト面を評価し、Hybrid SYNCの導入を2012年初頭に決定しました。結果的にはリアルタイムにデータの同期をとるなどデータ保全レベルが向上し、転送速度も高速化するなどツールの選択は正解だったと思います」と語るのは、OLGOの赤嶺貴司氏(営業推進部 営業推進グループ)である。
こうして大分県版の自治体クラウドは、2012年7 ~ 10月と4カ月間で順次、サービスを開始した。今までのところ運用は順調で、セキュリティや災害対策レベルが向上するとともに、サーバー環境の共有やカスタマイズ開発費の減額などで、コストダウン効果も確認できているという。
今年夏頃からは、定期的な仕様検討をスタートさせる予定だ。仕様検討や開発の期間が1年と短かったため、最初は新たなリクエストは受け付けない前提でスタートしたが、今後は各市町村からのリクエストも調整しながらさらなる一本化を図っていく計画であるという。

本記事はi Magazine2013年2月号に掲載されたものです。
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